[1990年代の台湾] 家庭生活も子育ても文化の壁

結婚生活も子育ての仕方も日本と大きく異なり戸惑うことしきりであるが、子供のことに精一杯なのは台湾でも同じことである。

台湾での生活には、先ず日本の常識を打ち破る必要があるかもしれない。

結婚したら仕事を辞めるは不思議なこと

台湾でも適齢期を迎えても結婚しない男女が多い。女性が自立して強くなったのか、頼りになる男性が少なくなったのか。

また、結婚して子供を育み家庭を築く男女もいるが、社会全体として少子化傾向のようである。

台湾の女性は結婚をしても仕事を辞めないことが普通であり、従って専業主婦も少なくなる。

大体は結婚後、夫婦共働きの生活を送る。

家庭の味は外食の味

旦那が遅くに帰れば、妻も同じである。

夕食は帰り道に買った出来合い料理。屋台で買うときもあれば、弁当のときもある。或いは夫婦揃って外食をする。

妻の料理の腕は結婚後も一向に上がるはずもない。

家政婦がいる家庭

これが少し裕福な家庭ともなれば、お手伝いさんを雇う。

昼には部屋の掃除から洗濯までそつなくこなし、夫婦が家に帰る頃には夕食は既に出来上がっている。

更にとても裕福な家庭なら、妻は仕事もなければ家事すらせずにのんびり暮らす。家事はもっぱら家政婦任せ。やがてそんな夫婦の間に子供が産まれる。

育児も人任せ

共働き夫婦であろうと、有閑マダムであろうと、やはり子供も他人に世話してもらうことが多い。

一般的には実家の両親に預けて、仕事に行く夫婦が多い。

今やそれが当り前になっている。

自分の子供は自分で育てるということは台湾では通じない。

中には産まれて間もなくベビーシッターの所に預けられる子供もいるし、更に平日は終日預けっぱなしで、週末だけを両親の許で過ごす子供もいる。

油にまみれた赤ちゃん

台湾では人と人の距離が近い。よく言えば親密度が高いのであるが、時に過剰と思えることもある。

私の友人夫婦に子供が産まれた。母子共に健康だ。強いて問題点を言えば、嬰児に若干発疹が見られる程度。

ある日、御主人がいつものように出勤から帰宅したところ、目に飛び込んできたのは全身油まみれになった我が子であった。

聞けば、子供の発疹には油がよく効くらしい。

それも胡麻油が特にいい。

御主人は日本人。

本国では思いも寄らぬ治療法に加えて、自分のいない間の出来事である。

更には、我が子を油まみれにしたのはさほど面識もない近所のおばさんとくれば、なかなかショックは隠せない。

夜泣きの子にする治療法

私は娘のことでこんな経験をした。生後間もない娘は夜泣きをする。私自身は子供は泣くものと思っているし、泣き方も決してひどくはないので、あまり気にも掛けなかった。

しかし、妻はそう思わなかったらしく、『収驚』と言う謎めいた夜泣きの治療法をした。

まず、子供が身に付ける衣類を携えて廟へ行く。

そこで子供の名前や住所・生年月日等を告げ、神官にお祓いをしてもらい、夜泣きを鎮める呪符を貰う。家に帰って、呪符を燃やし、その灰を赤ちゃんが入浴するときに風呂桶などに浮かべて入浴させる。

それで夜泣きが収まると言う。 その後、娘は適度に夜泣きをし、順調に育っている。

現在も上記の事情に大差ない。やはり台湾人はハートが熱い人が多いと思う。