[1990年代の台湾] 台湾式参拝の仕方

台湾人にとって廟は身近に信仰できる生活に密着した神聖な場所である。従って、台湾の廟を訪ねることは、台湾人の生活の一部を見ることでもある。熱心に時間をかけて参拝する台湾人を見ると、心が洗われる気分になる。そして、日本人として台湾に敬意を示すためにも台湾式の参拝をするのもいい。

参拝の準備をする

廟で参拝するときに必要になるものにお供え物、線香、金紙がある。

廟に行く前に、先ずお供え物を買う。

廟の周辺にはお供え物に向く物を売る商店が立ち並ぶので、そこで買う。

お供え物は基本的に何でも可であるが、通常、食品を選ぶ。

家庭用なら豚肉や魚がお供え物に選ばれることもあるが、例えば調理不要で日持ちしやすいフルーツやお菓子を買ってもいい。参拝が終われば、持ち帰るので、食べたいものを買う。

フルーツなら果物屋、お菓子なら菓子屋をはしごしながら購入する。少なくとも数品は揃えると、お供え物として見栄えがよくなる。

お供え物を買ったらそのまま廟に向かう。廟に入ったら、お線香と金紙が用意されているので、お布施するか実費を支払って入手する。お線香は束か10本くらいのセットになっている。

参拝の基本は三拝

廟内の御神体の前にお供物を置く大きなテーブルがあるので、そこにお供物と金紙を置き、線香はその全てに火を移す。

廟内をぐるりと見渡すと、廟によって数が異なるが、香炉が幾つかあるはず。手元のお線香を各香炉に配分しながら参拝することになる。

先ずは廟の中央付近にある一番大きな香炉を前にして奥の御神体に向かって、線香の束を捧げ持ち三拝し、お線香の一部をあげてから、御神体の前に進み、お線香を捧げ持ったまま三拝し、自分の住所と氏名を告げてお願い事をしてまた三拝する。自分の住所と氏名を告げるのは、神様にどこの誰がどんなお願いをしているのかを知らせるためである。神様も忙しいのである。

その後、廟内の他の香炉にお線香をあげて参拝しながら廟内を巡り、最後に余ったお線香を最初の大きな香炉にあげる。

その後、先程テーブルに置いた金紙を廟の入口付近にある炉にくべて燃やす。神様にお賽銭が届き、天上の先祖が貧窮せずに済むそうだ。

再生時の音量注意

いつもはこんなにうまく焼くことはできないが (動画出典:YouTube)

金紙を燃やし終われば、廟内の御神体に再び合掌三拝し、自分が持ち寄った香台の上のお供物を持って帰る。

参拝の最中は柏手を打ってはいけない。

廟での占い

参拝を終えて、一段落したところで台湾式占いをする人もいる。

これから記述する方法は、家の近くの廟でのやり方で、廟によってやり方が異なる場合があるらしい。

先ずお供え物を置くテーブルの近くに木製の筒があり、その中から70センチほどある八掛棒を適当に一本取り出して、テーブルに置く。そして、テーブルの上にある赤い三日月形をした木製の『神筈』という掌に収まるくらいの大きさの道具を手にする。

その神筈の片面は平面で「陰」を表し、もう片面は曲面で「陽」を表す。それは二つで一対なので、二つ一緒に握り持ち、占いたい内容を呟きながら床に落とす。

陰と陰が出たら神様が反対している。陽と陽なら神様があざ笑っている。また、床に落としたときに、足や物に当たってしまった。以上のいずれの場合も、先程引いた八卦棒は無効となり、筒に戻し、もう一度改めて八卦棒を選びなおす。

この作業を続けて、陰と陽が出たら、廟内にいる占い師のところに八卦棒を持っていくと、おみくじがもらえたり、占い師に知りたいことや気になることを直接伝えると回答してくれる。驚いたことに無料である。中には連続して陰と陽の組み合わせが3回出るまで根気よく続ける人もいる。その方が占いの精度が高まるらしい。

持ち帰るお供え物の話

台湾ではお供え物は持ち帰って自分達の胃袋の中へ消えていく。これは、食べ物を無駄にしないよくできた合理的なシステムである。

また、お供物に一旦使われた食品は早く腐敗してしまうそうである。言い伝えによると、神は香台に供されたものを食べられないが、その代わりに息を吹きかけるそうだ。神にも善悪様々いて、邪気を含んだ息も当然かかることになる。だからこそ、腐敗し易い。供物が肉や魚になると、とても顕著に表われる。

もっともその言い伝えは、長時間常温で放置されて、腐り易くなっているから、なるべく早く食べなさいと言う先人達の知恵と思いやりであると思われる。

現在も台湾の廟には参拝客が絶え間なくやってくる。台湾人と廟は切っても切れない縁がある。

再生時の音量注意

(出典:YouTube)

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