[1990年代の台湾] 漢方医という選択

台湾では西洋医と漢方医がいる。大まかに言うと、急性疾患には西洋医を、そして慢性疾患には漢方医を選択できる制度である。もちろん、どちらの医師にかかるかは、患者が決める。

漢方医と西洋医の制度が確立している台湾

台湾には漢方医がいて、『中醫師(中醫)』と呼ばれている。

台湾の医師免許は漢方医師免許と西洋医師免許の2種類あり、いずれも国家試験である。

ただ、漢方医は、メスを握る西洋医に比べれば、脚光も浴びにくく地味な印象である。恐らく使用する医療器具や治療方法やスピードの差によると思う。

西洋医は医療機器でデータや画像をみたり、止血や蘇生術など即効性のある治療をしたりするが、漢方医の治療は問診や触診が中心で、しかも総じて時間がかかりがちである。

しかし、漢方医が問診や触診で得たデータをパソコンに入力して、最後に処方箋が作成される様子を見ると、東洋医学の近代化も進んでいることを感じる。

漢方薬は粉薬と煎じ薬の2種類

漢方医による診察が終わり、医師から粉薬か煎じ薬の希望を聞かれ、処方箋を受け取れば、『中藥行(漢方薬局)』に行く。

漢方薬は、煎じ薬の方が吸収力などが優れているらしく評判がいい。

漢方薬局に入ると漢方薬の香りに包まれ、漢方薬が詰まった引き出しが壁一面にずらりと並ぶ。

薬剤師は、処方箋を見ながら引き出しを開け閉めしながら、漢方薬を取り出して、30cmはあろうか正方形の紙製の薬嚢に包んでくれる。

粉薬ではなく煎じ薬の場合、原形のままの大小様々な薬材を何種類も包むので、その包みはかなり膨れ上がり、ボリューム感がある。

その漢方薬を家で煎じるのだが、アルミなどの金属製の鍋を使用しないのがよい。何故なら、漢方薬の成分が金属に反応してしまう場合があるので、土鍋などで煎じるのがよいそうである。

西洋医療か漢方医療か自分で選択できる

病気になった時、台湾人は先ず西洋医を受診することが多い。

しかし、はっきりとした病名がわからなかったり、病気ではないと言われたが調子がおかしいとか、難病で現代医学では治せなかったりした時に、漢方医にかかることが多いようである。

また、台湾人医師からは急性疾患には西医を、慢性病には中医を選択するのもいいと聞いた。

このように台湾では漢方医と西洋医を目的に応じて選択できる幅広の医療環境にある。 なお、『中西合診』という漢方医学と西洋医学を融合した診療科目を設けている大学付属病院もある。そこでは漢方医と西洋医が連携しながら診察する。

現在も漢方医も漢方医のいる診療所も健在である。制度として確立されたものであるから、今後もなくならないことだろう。