[1990年代の台湾] 中華路夜市は台中名物

台中の名物は何かと地元民に聞いたことがある。最初は皆あれこれ言っていたが、最終的に「省議会」、「太陽餅(台中の銘菓)」、そして「中華路夜市」に落ち着いた。そこで、気軽に行けて、万人受けする中華路夜市について記述する。

中華路夜市は一大エリア

台中駅から見て北西部に位置する中華路夜市は、主に中華路上に屋台が立ち並ぶことからそう呼ばれている。長さ5、600メートルほどになり、民権路と公園路のそれぞれの交差点までの中華路上を中心に形成されるが、公園路上にも屋台が立ち並ぶ。台中駅からは、徒歩20分くらいである。

中華路を民権路側から出発すれば、途中、民族路、中山路、中正路、成功路と交差し、公園路の交差点まで食べ物屋台が中心で、更に公園路上には電気製品、時計、鞄、下着、衣類、カセットテープやCD、仏教用品、アクセサリー、化粧品、靴、寝具等、色とりどりに並べられた雑貨を売る屋台がひしめき、占いの屋台まである。

観光で台中を訪れる人にとって、中華路夜市は台湾の味を楽しめる上にちょっとしたお土産まで揃えられるので、放っておけない観光ポイントである。

夕暮れ時に屋台が集結

台中の『中華路』は、少しは名の知れた通りだ。日が暮れなずむ頃、その通りは、俄に活気だってくる。

全体が鈍い銀色に光る金属製の車輪付きのコンパクトに畳まれた屋台が、2、3人に押されながら通りをのろのろとやってくる。その後ろには追い越しのままならない車がいらいらしながら続くこともある。

集まった屋台が所定位置に着き、テーブル、いす、食器に水回りのセッティングが終わり、最後に看板に明かりがつけば店開きである。水道や電気は、屋台を置く後ろにある建物から引いている。もちろん家主の許可を得ている。但し、ガスだけは屋台持ちである。

夜市の一番人気は食べ物屋台だが、テイクアウトは独特

食べ物屋台では『外帯』と言って、テイクアウトサービスがある。ホテルの部屋でゆっくり寛いで屋台の料理と台湾ビールに舌鼓を打ちながら台湾のテレビを見て、異国情緒に浸るのも良い。

しかし、この屋台のテイクアウトの見栄えに慣れるまで時間を要した。

屋台の店主がゆで上がったばかりの麺だけでなく熱いスープまでも無造作にビニール袋の中に放り込み、開封口をきゅっとビニール紐で縛って手渡される。それは、あたかも縁日の金魚掬いのビニール袋に入った金魚を持ち帰るようで、初めて見た時はショックを受けた。

また、どの屋台の料理もおいしそうに見えるが、中にはそれほどおいしくない店が混じっていることも忘れてはならない。おいしい屋台には行列ができるので、それがおいしい屋台を見つける一つの目安になる。

ユニークな屋台も見逃せない

話しついでに風変わりな屋台を紹介しよう。人の頭より一回り小さいヤシの実を山積みにしている屋台は、南国ムード満載である。堅いヤシの実の上部をナタのような刃物でかち割ってストローを差してくれる。ほのかに甘いココナッツ果汁は、真夏の夜の体に染み渡る清涼飲料である。但し、漢方学的には飲み過ぎは体を冷やし過ぎるので良くないとも言われている。

もう一つは果物屋台がある。フルーツ天国の台湾は果物が豊富であり、季節のフルーツが屋台にてんこ盛りになっていて、計り売りしてくれる屋台もある。更にパック詰めもあり、既に皮が剥かれたリンゴや、グアバ、スイカ、ミニトマト等に楊枝を添えて売っている。 様々な屋台が集まる中華路夜市は季節を問わず、今夜も台中を「不夜城」と知らしめるが如く、明け方近くまで賑わっている。

現在、台中の中華路夜市は、一昔前と比べるとかなり衰退してしまったが、落ち着いた夜市巡りをしたい向きにはまだまだ魅力的に映るかもしれない。しかし、夜市自体が廃れた訳ではなく、郊外に舞台を移し、台中では逢甲夜市が活気があってお薦めである。