[1990年代の台湾] 活力あふれる台湾市場

台湾人は、よく食べ、よく飲み、よく遊ぶ。人生の楽しみ方を知っているポジティブな人が多い。そんな彼らの胃袋を満たす食材は、こぎれいなスーパーマーケットではなく、町にある昔ながらのエネルギッシュな市場にあるのだと思う。

朝市(朝に開く市場)

朝市は、市場にたつ。薄暗がりの午前三、四時頃より活況を呈し、周辺道路は肉、野菜、魚を満載した搬入車両で溢れかえり、市場関係者がこうこうと明かりを灯して営業する屋台で腹ごしらえする。市場と言っても、ここは、仲買人が出入りする市場ではなく、一般庶民が買い物をする、いわば古典的なスーパーマーケットである。地元民は、「菜市場」と呼んで、庶民の生活にすっかり溶け込んでいる、東京は上野のアメリカ横丁のような市場である。

陽が昇ると、市場関係者と入れ替わりに、中年女性の往来が激しさを増す。庶民の台所を支える市場の出入口では、市場の中へ入ろうとする人波と、買い物を終えて外に出ようとする人波でごった返す。

市場は、昔から続く老朽化した佇まいに、今でもなお健在する活気が対称的である。

夕市(夕刻に開く市場)

朝市があれば、『黄昏市場』と呼ばれる夕暮れに立つ市もある。夕市も朝市同様、庶民の食生活を支える役を帯びるが、朝市の数と比較して、夕市の数はかなり少ない。

市場の内部

市場に入ると、通路が何本も走り、その両側は種々雑多な店で埋め尽くされている。果物、野菜、魚、肉、総菜、服飾品、玩具、花を売る店が並ぶ。

通路を進む先々で売り子に声を掛けられる。売り子と言ってもそのほとんどが商店主のおじさんやおばさんである。威勢よく声を張り上げるのは、売り子だけでなく、買い物客も注文やら値引き交渉やら、賑やかである。そして、生きたままのニワトリもけたたましい鳴き声を上げる。

いかにも南国らしい色や顔をした魚が氷の塊の上に並べられ、そのそばで店の主が魚鱗をまき散らしながら剥いでいる。そして、肉屋の店先に豚の頭がぶら下がる。

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参考動画(出典:YouTube)

市場の小さな住人達

ほとんどの市場は始終じめじめしていて、水捌けもよくない。湿った床の窪みには水溜りができ、生物の脂も堆積してくるのだろう。お世辞にも心地良いとは言えない臭いがどうしても鼻を刺激してくる。

生き物達にとっては格好の住処なのだろう。ゴキブリもいれば、時折、鼠が場内を駆け巡り、それを追ってきたのか猫も見かける。そして、蠅蚊が羽音をたてて元気よく飛び回る。台湾の市場は、人に動物、それに昆虫に至るまで、引きつけて離さない魅力に富んでいる。 見るもの、聞くもの、嗅ぐもの、全てがダイナミックである。

現在では、店内がきれいなスーパーマーケットが増えましたが、庶民の市場もまだまだ元気に営業しています。恐らくは若い人を中心にスーパーマーケットに流れたのでしょう。人が少しだけ少なくなった分、以前よりのんびりと市場内を見て回れるようになった気がします。