[1990年代の台湾] 都会の活気に目を奪われながらも、四方に目配りが必要

台湾の街並みは、カラフルな看板や装飾に彩られ、見る者の目を楽しませてくれる魅力がある。漢方薬の匂いが立ち込める薄汚れた歩道は凸凹で、お世辞にも歩きやすいとは言えないが、それでもどこまでも歩いて行きたい気持ちにさせるのが台湾の街並みである。

台湾の都会にはスコールがよく似合う

見上げると、ビルは高さが不揃いで、窮屈そうに立て込んでいる。色や大小バラバラな看板は、自由に自己主張しながら思い思いにぶら下がる。ビルの一階を占める商店は奥に引っ込み、店先に軒がかかる空間が生まれ、露天商や通行人や駐車などに利用されている。台湾は、スコールがよく降る。ギラつく太陽を暗雲がさっと隠し、たちまち大粒の雨が激しく地面を叩くように降る。すると、人々は、雨宿りができるこの空間にどっと押し寄せ、黒い空を見上げる。

歩きにくい歩道を行く

さて、そんな空間は、平坦ではない歩道である。建物の所有者によって、思い思いに盛ったりしているので、建物ごとに段差が生じる。歩くと、段差を上ったり下ったりで、まことに歩きにくい。更には、ぎっしりと停められたバイクや、頭から突っ込んで駐車する車両が行く手を遮る。足元には土埃に、転がる飲料パック、紙屑、煙草の吸殻、中身が飛び出す汚れたレジ袋、それに犬猫の排泄物までが散乱する。通行人はそれらを避けながら先に進む。

歩を進めるごとに飽きない商店街

道を進むにつれ、業種も様々な店が目を楽しませる。靴屋、鞄屋、飲食店、貴金属店、薬局…。季節の変わり目に差し掛かる洋装店内を、『Sale』や『打6折(※40%OFF)』の文字も鮮やかなポップ広告が飾り立てる。店先のラジカセが通りに向かって音楽を流している。店から店へ歩を進めれば、聞こえてくる音楽も変わっていく。時折、日本の流行歌や演歌にふと立ち止まる。

街の匂い

暫く町筋を散策していると、漢方薬或いはお香のような匂いが漂う。人によって反応する匂いは違うだろうけど、私にとって台湾の街は、大方こんな匂いを放っている。

見知らぬ街もわかりやすい

台湾の街は地図さえあれば、道に迷うことは少ない。道には『仁愛路、中山路、三民路、平等街、四維街』だの、何かしらの名前が付けられている。そして、標識は随所の交差点に立つので、わかりやすい。そして、タクシー利用の場合、「〇×路と□△路の交差点まで」のようにドライバーに伝えると間違いなく、連れて行ってくれる。

道路横断に注意

横断歩道や信号があっても、台湾の道路は車優先である。前方の信号が青でも車は平然と突っ込んでくると思った方がよい。信号機は参考程度で、やはり頼りは自分の目と耳である。私のような歩行者にとって、台湾人の運転は危険だと思うが、彼らは自分の運転に自信を持ち、台湾の運転技術は世界一だと口を揃える。 道路を渡る時は、信号を参考に、前と左右だけでなく、後にも注意したい。後方から追い抜きざまに前を横切る車もあるからである。

現在では、車のマナーが向上したようですが、日本人の目から見たら、まだまだスリリングです。道路を横断するときは、右見て、左見て、前見て、後ろ見て、歩きましょう。