台湾は、今般の新型コロナウイルスの情報共有のためにWHO(世界保健機関)に参加を希望するも、政治的要因によりオブザーバーとしてすら参加できないという、まさに世界の防疫ネットワークから外される異常事態に陥った。
それにも関わらず、新型コロナウイルス対策で世界的に模範に値する施策を次々と打ち出し、2021年4月25日現在、台湾総人口約2400万人に対し、罹患患者総数1100名、罹患死亡者数12名という成果を上げている。
以前、こんなことがあった。
2002年当時、中国広東省が発生源とされるSARSが世界を混乱に陥れた際には、やはりWHOに参加できず、台湾がSARSを封じ込めたのは世界で一番最後だったという辛酸を味わっているのである。
この当時にも台湾は、参加を望んだもののWHOに参加できなかった。
台湾はきっとSARSの際の教訓を独自に学び、今回の新型コロナウイルス対策に生かしたのだろう。
そして、あいにく今回もWHOの防疫網から外されていたが、それでも健闘できている。
災い転じて福となす。
今回の世界的にも好事例となった経験は、台湾人にとって、自信に繋がったと思われる。
今回の新型コロナウイルスの防疫に関して、衛生福利部疾病管制署(Taiwan Centers for Disease Control、台湾感染症コントロールセンター、以下台湾CDC)及びリーダーを「陳時中」とする中央流行疫情指揮中心(Central Epidemic Command Center, 以下CECC)が適切な状況把握とスピーディーな対策を推進した。
台湾において、第二波の懸念が払拭されないものの、台湾が第一波を制圧するまで2019年12月から2020年5月に至るまで辿った軌跡を大雑把な概要で恐縮であるが、以下に記載する。
2019年12月
31日
- 中国武漢からの直行便に対する機内検疫を開始 [1]
2020年1月
2日
- 中国武漢を往来する台湾人、並びに台湾の医療関係者に注意喚起 [2]
6日
- 中国武漢における肺炎について、SARS及びMARSとは異なる不明病毒であると発表。武漢から帰台後14日以内の発熱や呼吸器症状に受診を指示 [3]
7日
- 中国武漢への渡航注意レベルに指定し、武漢と周辺地域在住台湾人に対して予防措置及び注意喚起を呼びかけ [4]
15日
- 法定伝染病に指定 [5]
20日
- 中央流行疫情指揮中心(Central Epidemic Command Center, 以下CECC)を設置 [6]
- 医療従事者に患者の病歴、治療記録、接触記録、旅行記録等を問診するよう指示。受診者の虚偽申告に罰金を科すと警告 [7]
- マスク等医療器材の高値売買や買い占め等を禁止し、違反者には刑事罰 [8]
21日
23日
24日
- 中国・香港・マカオに渡航歴のある者は14日間の在宅検疫の対象に [15]
- 救急医療現場の負担軽減のためPCR検査の拡大を宣言。無症状帰台者に外出、密集地、交通機関を避けるよう呼びかけ。中国・香港・マカオからの旅客に対して健康状態申告メカニズムを始動 [16] [17]
- 訪台禁止範囲を湖北省に拡大、中国への台湾人団体ツアー中止と台湾人ツアー団体に迅速な帰台を要請 [18]
27日
- 中国・香港・マカオからの訪台を大幅に制限 [19]
28日
- コンビニ等を通じて一人マスク3枚を限度に供給開始 [20]
31日
- 国内製医療用及び外科用マスクはCECCを経由して民生需要と医療需要に分けた上で配給し、民生需要に関しては一人3枚に制限 [21]
- 慢性病、付き添い看護、受診者にマスクを優先購入させるよう訴えた [22]
2020年2月
1日
- 中国広東省が市中感染、同地中国人を来台禁止に、台湾人帰台者は一律14日間の在宅検疫を指示 [23]
2日
- 中国浙江省温州市に市中感染の可能性、同地中国人の来台禁止、台湾人帰国者は一律14日間の在宅検疫を指示 [24]
- 中国・香港・マカオからの無症状来台者に外出自粛 [25]
- 市中感染リスクがまだないが、学校の休校措置 [26]
6日
- 本人確認の上、1週間2枚のマスクの限定販売開始 [27]
7日
12日
- 在宅隔離及び在宅検疫の違反者に対して、罰金を課すと表明 [30]
14日
- 日本の市中感染可能性に言及 [31]
22日
- 韓国と共に日本への旅行を警報レベル級とした [32]
23日
- CECCは22県市と共同で「在宅検疫及び在宅隔離サービス計画」のプラン策定完了を26日、実施開始を3月1日とした [33]
24日
2020年3月
5日
18日
- 自宅隔離者の携帯電話搭載GPSとAIによる管理システムを結合して、隔離者の行動を確実に把握。また、LINEを使用して健康状態を報告し、第一線スタッフの負担軽減 [39]
24日
- トランジットも含む全面的な来台禁止に [40]
2020年4月
1日
9日
- 台湾全土のクラブ等の営業停止 [43]
10日
- 連休期間の観光スポット、夜市、寺廟の入場規制 [44]
24日
- ワクチン・治療薬の開発強化にCECCが技術支援プラットホーム設置 [45]
2020年5月
6日
- 状況の安定に伴い、防疫措置の緩和へ [46]
9日
- 医療従事者に対する手当支給等 [47]
13日
- 感染リスク低減により予防措置を講じた上で正常な生活を回復可 [48]
なお、今回のコロナの渦中、どこの薬局にどのくらいの在庫があるのか、マップ上で可視化したプラットフォームを立ち上げて成果を上げたことも世間の注目を集めた。
https://kiang.github.io/pharmacies/
上記のシステム構築に多大な貢献をしたのがオードリー・タン氏 (唐鳳)である。
オードリー・タン氏 は、台湾が新型コロナウイルスの渦中、短期間で台湾全土の薬局のマスク在庫数をウェブ上で確認できるシステム構築に功績を残した人物として広く知られています。 2020年9月24日及び25日、「Salesforce Live[…]
かつて1990年代の台湾は、まだ少し自信に欠けていた時代であった。私から見ると、十分に世界に通じる実力があるにも関わらず。
活路を求めて外国に出て行こうとする台湾人が多いのと比較すると、積極的に海外に出ようとする日本人は少数である。それぞれの国家背景や境遇が反映されているのだろう。 台湾人は外国に憧れがある分、台湾に対して自信に少し欠けるところが見受けら[…]
台湾は、WHO(世界保健機関)に参加を希望しても、政治的要因によりオブザーバーとしてすら参加できないという、まさに世界の保健ネットワークから外されている異常事態にも関わらず、新型コロナウイルス対策で世界的に模範に値する施策を次々と打ち出し、[…]
また、政府の政策の裏では、逃亡した陽性患者を市民が必死に探すのに協力したり、海外からの入国や帰国者は2週間の自主隔離中(自己負担)に定時の報告や、GPSを使用した居場所確認等が義務化され、違反者には高額な罰金が課せられるから、政府の施策に効果が出るのである。
同じことを果たして日本ができるのだろうか。
2020年を振り返ってみると、世界中で年初から暗いニュースが続いた一年でした。 一番印象深く、いまだに傷跡を残し続けているのが新型コロナウイルス関連のニュースです。 2020年において、感染患者数が3桁、死亡者数1桁。 世界の中でも台[…]