台湾の新型コロナウイルス対策が大健闘

台湾は、WHO(世界保健機関)に参加を希望しても、政治的要因によりオブザーバーとしてすら参加できないという、まさに世界の保健ネットワークから外されている異常事態にも関わらず、新型コロナウイルス対策で世界的に模範に値する施策を次々と打ち出し、2020年10月1日現在、台湾総人口約2400万人に対し、罹患患者総数515名、罹患死亡者数7名という成果を上げている。

2002年に中国広東省が発生源とされるSARSが世界を混乱に陥れた際には、台湾がSARSを封じ込めたのは世界で一番最後だったという辛酸を味わっているのである。

この当時にも台湾は、WHOに参加できていなかった。

台湾はきっとSARSの際の教訓を今回の新型コロナウイルス対策に生かしたのだろう。

そして、あいにく今回もWHOの防疫網から外されていたが、それでも健闘できている。

災い転じて福となす。

今回の世界的にも好事例となった経験は、台湾人にとって、自信に繋がったと思われる。

今回の新型コロナウイルスの防疫に関して、衛生福利部疾病管制署(Taiwan Centers for Disease Control、台湾感染症コントロールセンター、以下台湾CDC)及びリーダーを「陳時中」とする中央流行疫情指揮中心(Central Epidemic Command Center, 以下CECC)が適切な状況把握とスピーディーな対策を推進した。

台湾において、第二波の懸念が払拭されないものの、台湾がこれまで辿った軌跡を大雑把な概要で恐縮であるが、以下に記載する。

2019年12月

31日

  • 中国武漢からの直行便に対する機内検疫を開始 [1]

2020年1月

2日

  • 中国武漢を往来する台湾人、並びに台湾の医療関係者に注意喚起 [2]

6日

  • 中国武漢における肺炎について、SARS及びMARSとは異なる不明病毒であると発表。武漢から帰台後14日以内の発熱や呼吸器症状に受診を指示 [3]

7日

  • 中国武漢への渡航注意レベルに指定し、武漢と周辺地域在住台湾人に対して予防措置及び注意喚起を呼びかけ [4]

15日

  • 法定伝染病に指定 [5]

20日

  • 中央流行疫情指揮中心(Central Epidemic Command Center, 以下CECC)を設置 [6]
  • 医療従事者に患者の病歴、治療記録、接触記録、旅行記録等を問診するよう指示。受診者の虚偽申告に罰金を科すと警告 [7]
  • マスク等医療器材の高値売買や買い占め等を禁止し、違反者には刑事罰 [8]

21日

  • マスクの売り切れが続出し始める。行政院はパニックにならぬよう呼びかけた [9]
  • 台湾で初の感染者を確認 [10]

23日

  • CECC指揮官に陳時中が着任、武漢居住者の訪台禁止、デマやフェイクニュースの拡散に刑事責任を問うと注意喚起 [11] [12]
  • 航空各社は武漢への直行便運航停止 [13]
  • マスクに輸出規制 [14]

24日

  • 中国・香港・マカオに渡航歴のある者は14日間の在宅検疫の対象に [15]
  • 救急医療現場の負担軽減のためPCR検査の拡大を宣言。無症状帰台者に外出、密集地、交通機関を避けるよう呼びかけ。中国・香港・マカオからの旅客に対して健康状態申告メカニズムを始動 [16] [17]
  • 訪台禁止範囲を湖北省に拡大、中国への台湾人団体ツアー中止と台湾人ツアー団体に迅速な帰台を要請 [18]

27日

  • 中国・香港・マカオからの訪台を大幅に制限 [19]

28日

  • コンビニ等を通じて一人マスク3枚を限度に供給開始 [20]

31日

  • 国内製医療用及び外科用マスクはCECCを経由して民生需要と医療需要に分けた上で配給し、民生需要に関しては一人3枚に制限 [21]
  • 慢性病、付き添い看護、受診者にマスクを優先購入させるよう訴えた [22]

2020年2月

1日

  • 中国広東省が市中感染、同地中国人を来台禁止に、台湾人帰台者は一律14日間の在宅検疫を指示 [23]

2日

  • 中国浙江省温州市に市中感染の可能性、同地中国人の来台禁止、台湾人帰国者は一律14日間の在宅検疫を指示 [24]
  • 中国・香港・マカオからの無症状来台者に外出自粛 [25]
  • 市中感染リスクがまだないが、学校の休校措置 [26]

6日

  • 本人確認の上、1週間2枚のマスクの限定販売開始 [27]

7日

  • 中国からの訪台禁止、他の訪台者も大幅制限 [28]
  • 去る1月31日に台湾基隆港寄港のダイヤモンド・プリンセス号の下船観光について、接触者等を把握 [29]

12日

  • 在宅隔離及び在宅検疫の違反者に対して、罰金を課すと表明 [30]

14日

  • 日本の市中感染可能性に言及 [31]

22日

  • 韓国と共に日本への旅行を警報レベル級とした [32]

23日

  • CECCは22県市と共同で「在宅検疫及び在宅隔離サービス計画」のプラン策定完了を26日、実施開始を3月1日とした [33]

24日

  • 警戒レベル1級及び2級国からの来台者について、14日間の自主健康管理措置を決定し、実質的な自宅隔離になり、違反者には15萬元の罰金 [34][35]

2020年3月

5日

  • 企業向けガイドラインを公表 [36]
  • マスク7日間3枚の制限付きで実名登録制による販売を開始 [37]
  • 密閉・密集・密接を訴えるガイドラインを公表 [38]

18日

  • 自宅隔離者の携帯電話搭載GPSとAIによる管理システムを結合して、隔離者の行動を確実に把握。また、LINEを使用して健康状態を報告し、第一線スタッフの負担軽減 [39]

24日

  • トランジットも含む全面的な来台禁止に [40]

2020年4月

1日

  • 隔離用ホテル(有料)の設置と管理に関するガイドラインを公布 [41]
  • ソーシャルディスタンスに関する注意事項を公布 [42]

9日

  • 台湾全土のクラブ等の営業停止 [43]

10日

  • 連休期間の観光スポット、夜市、寺廟の入場規制 [44]

24日

  • ワクチン・治療薬の開発強化にCECCが技術支援プラットホーム設置 [45]

2020年5月

6日

  • 状況の安定に伴い、防疫措置の緩和へ [46]

9日

  • 医療従事者に対する手当支給等 [47]

13日

  • 感染リスク低減により予防措置を講じた上で正常な生活を回復可 [48]

なお、今回のコロナの渦中、どこの薬局にどのくらいの在庫があるのか、マップ上で可視化したプラットフォームを立ち上げて成果を上げたことも世間の注目を集めた。
https://kiang.github.io/pharmacies/

かつて1990年代の台湾は、まだ少し自信に欠けていた時代であった。私から見ると、十分に世界に通じる実力があるにも関わらず。

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台湾の成功事例を日本が模倣したとしても効果はさほど上がらないであろう。何故なら、日本では個人情報として国民が情報の公開を拒む一方、台湾では、どこで誰が罹患したかを政府が公開する。従って、国民はピンポイントで危険を知ることができる。先ずここで大きな差が生じる。
また、政府の政策の裏では、逃亡した陽性患者を市民が必死に探すのに協力したり、海外からの入国や帰国者は2週間の自主隔離中(自己負担)に定時の報告や、GPSを使用した居場所確認等が義務化され、違反者には高額な罰金が課せられるから、政府の施策に効果が出るのである。
同じことを果たして日本ができるのだろうか。