[1990年代の台湾] 値切り交渉はどこまでできるか

アジア諸国には値段交渉が習慣になっているような国もあり、正規料金に予め上乗せした金額になっているから、値切らないと高い買い物になると聞いたことがある。

台湾人は親切な人が多い。明らかに相場より高額だったり、手持ちがなくて少し安ければ買いたいものなら値切るのもありだが、普段は相手が率先してサービスしてくれたりする。

旅行ガイドブックの弊害

商品には定価がつきものである。

日本で発行された台湾の旅行ガイドブックを見ると、台湾では値引き交渉可能とある。中には驚くような値段で買えたと、体験談もある。ならば、私にだってできそうだ。買いたいものをあれこれ考え、是非やってみようとつい意気込んだ。

ある日、デパートに行くと、一つの腕時計に目が止まった。青い皮バンドで、ローマ数字の文字盤。値引きに難色を示す店員と粘りのある交渉の末、二割以上の値引きとなったが、店員は決して嬉しそうではなかった。

その後、それを知った妻から「デパートは値引きしないわよ。」と言われ、はっと我に返ったと同時に、あの店員さんへの申し訳なさで胸が一杯になった。

店内に『不二價』と表示する店がある。それは定価販売を意味する。個人経営の店に貼り出されていることが多い。

台湾は買い物天国で、さも値引くのが当たり前のようにガイドブックに書いてあるが、スーパーやデパートは値引き対象外である。他の店でも節度を持って、決して気まずくならないようにしたい。

値引き同然のサービス

『不二價』は前出したが、『買一送一』の表示もよく見かけるので、覚えておいて損はない言葉である。これは、一つ買えば一つおまけに付けるという意味である。一つ半額で買えるわけで、実質上の値引きになる。お客に値切らせず、またお得感も出せるので、台湾ではポピュラーな売り方の一つである。但し、商品によっては二つも要らないものもあるが。

値引けないもの

値引きの対象外だろうと思うものがある。例えばホテル代。

しかし、たいていのホテルならあっさりと値引きに応じてくれるところが多い。しかもこちらが言うより先にホテル側から値引きを持ちかけられる場合もある。

ホテルの場合、値引きであるが、逆に定価より高くなるものもある。

台湾でタバコは国が専売している。タバコは定価販売のはずが、買う場所によっては逆に高くなる。例えば、喫茶店やレストランの飲食店内。そこでは定価より百円も二百円も高くなる。しかも、店によって値段が微妙に違う。

なかでも日本のタバコの価格がもっとも一定しない。例えば、同じマイルドセブンでも二種類ある。一つは台湾の専売局が売る中国語表記がある正規品であり、もう一つは日本語表記だけのいわゆる密輸品に相当するものである。

では、どちらが安いか。それは正規品が安く、密輸品の方が高いのである。正規品を定価で買いたいならコンビニになる。

台湾人は日本からのタバコを好んで吸う。聞くと、こちらのほうがおいしいからだそうだ。だから余分にお金を払っても構わないと言う。

夜店の風船割りゲームでタバコの景品が当たった。一見してマイルドセブンかと思って驚いたが、よくよく見るとマイルドナインだった。台湾も香港同様にコピー商品が多い。タバコすらコピーしてしまう。但し、ここまでくると、コピーというよりジョーク商品である。

値切らなければ、新発見があるかも

値引けると思ったら値引きできなかったり、値引けないと思ったらあっさり値引いてくれたり、一体何を基準に判断すればよいのだろう。

場所やものによって、値引きできるか否かの事前の判断はあえて不要かもしれない。台湾人は親切で気前のいい人が多いので、相手に任せてしまうのも手かもしれない。

国によっては、外国人向けに高い価格を設定していたりする。しかし、台湾においては、未だそのような二重価格があるのを聞いたことがない。むしろ、外国人だからと贔屓してもらったりすることの方が多い。 そして、こちらが何も言わなくても値引くこともあるし、値引いてくれなくてもサービスを付けてくれたりするので、期待しなかった分だけの感激があるし、意外性も楽しめる。

現在も上記同様で間違いなしです。値引きに応じてくれる場合は、こちらが黙っていても引いてくれますし、サービスしてくれる優しい店員さんがいたりします。台湾なら安心して買い物を楽しめるでしょう。
また、現在では、台湾はコピー商品の取り締まりが厳しく、あまり見かけなくなりました。