[1990年代の台湾] 台湾人は時間にルーズなわけではない。時差があるだけ

日本人は、時間に関してかなり厳しい。台湾で同じ時間感覚で暮らすのは、精神衛生上あまりよろしくない。日本と台湾には一時間の時差があり、行動様式にも時差があると考えると丁度いい。

日本にいると時間厳守であり、遅刻すると約束を守れない信頼できない人になってしまうが、台湾で日本流を押し通すと、些細なことにこだわる度量のない人に映る。

人間同士、考え方に柔軟性と寛容な気持ちで接するのが、いい関係を保つ方法である。ケ~セラ~セラ

日本時間より一時間遅い

台湾へ向かう機上でビ-ルと機内食を平らげ、つい寝込んでしまう。到着間近に機内アナウンスで、はっと目覚める。「当機はまもなく中正国際空港に着陸致します。現地到着時間は…」。眠い目をこすりながら、腕時計に目をやり、時間を一時間遅らせる。

腕時計の分針をぐるりと一周逆回転させると、一時間得した気持ちになる。

歩く速度も遅い

台湾でもつい東京を歩く調子でさっさと歩いてしまい、後から付いてくる妻によくなじられた。そこで肩を並べて歩くようにしたが、今度は横の妻が私の歩調に釣られて、いつしか歩みが速くなってしまう。

最終的に、妻の後を付いていくのが懸命と考えた。お陰で私の歩くペースも大分落ち、引いては夫婦円満をもたらした。

最近では台北の人々の足も速くなったらしいが、地方都市ではまだまだゆっくり歩く。

結婚式も一時間遅れて始まる

結婚式に招かれる。招待状には18時からとある。式場までは30分かかる。

当日の17時半。出発の時間だ。妻に同行するのだが、部屋を覗いて愕然とした。まだ着ていく服を選んでいる。慌てて妻を急かしたが、「大丈夫よ。まだ間に合うわよ」と言うだけで落ち着いている。

結局、家を出たのは18時過ぎ。途中、足早の私を宥めるように「まだ早いから、のんびり行きましょうよ」と声を掛ける。

18時半を回った頃にやっと会場に着くと、招待客も疎らなら、新郎新婦の姿も見えない。遅れたと思った私が一番乗りで、横にいる妻は間に合うって言ったでしょと言いたげな得意顔であった。結局、人が集まり、結婚式らしい体裁を成したのは19時を少し回ってから。

人々が寄り集まるときには、申し合わせたように一時間ほど遅れて始まる。

昔は地位の高い人ほど遅刻すると言われた。そんな伝統の受け売りが現在まで脈々と続く節もあるが、むしろ今では身分の分け隔てなく、誰もが気安く遅刻するようである。

時間に遅れるのがむしろ普通

日本を知る友人は、待ち合わせするときに日本時間か台湾時間かを確認してくる。冗談めかして、時間厳守であるか否か聞いているわけである。

時間について、台湾人と約束するときには再三の確認を怠らないほうが良い。しかし、何度念を押しても遅刻する人は遅刻する。中には飛行機に乗り遅れる人までいるくらいである。

以前、自宅から空港まで迎えに行ったのに、一向に現われない。それから時は流れ、私が新郎になった宴席でその人は白無垢を着て、遅れずに時間通りに横に座っていたので、以前のことは水に流そう。

現在、中正国際空港の名称は、台湾桃園国際空港に変わっています。変わっていないのは、一時間の時差だけです。

 

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