[1990年代の台湾] 適度な挨拶

中国語の挨拶には、「おはよう」→『早安』、「こんにちは」→『午安』、「こんばんは」→『晩安』等があり、よく使われる。しかし、他の「ありがとう」→『謝謝』、「すみません」「ごめんなさい」→『対不起』『抱歉』になると、使うべき場面でそれほど多く聞かれない。

お礼の言葉は省略気味

日本では感謝は美徳であるようなことを聞く。確かに「ありがとう」と言うのも言われるのもお互いに気分が良いものである。

通行人に道を譲ってあげたりしても、品物と釣銭を手渡す店員にお礼を言っても、何の反応も返ってこずにがっかりする時がある。

では、身近の人達の間ではどうなのだろうか。

もちろん普通にお礼を言ったりするのだが、時にはこちらが困っていると素知らぬ顔で手伝ってくれたり、私がお礼を言うと気にしないでいいからと言ってくれたりする。

台湾人はお礼について、かしこまって考えることはないと思われる。純粋に助けてあげることだけを考えて行動しているのかもしれない。

謝罪の言葉も省略気味

一方、謝罪の意を表明する『対不起』或いは『抱歉』に至ると、使用頻度が更に一段と低くなる。

台湾人は自由であると既に述べたが、寛容さがあることも付け加えておく。従って、相手を執拗に責めたてないので、その分謝罪の機会も少なくなるのかもしれない。

細かなことはあまり気にせず、大らかなのである。

そもそも使われない挨拶もある

さて、華語には「いただきます」にぴったり当てはまる言葉がない。さあ食べようと同席者に勧めながら食べ始める。

日本人は、定例の挨拶なしに食べ始めるのに抵抗があり、友人の一人は律儀に日本語でいただきますと言ってから食べ始める。

「いっていらっしゃい」にぴたりと当てはまる慣用句がない。もしも、その代わりの言葉があるとしたら『早一点回来』であるかもしれない。日本語に訳せば「早く帰ってきてね」。優しい響きがあって、耳に心地良い言葉です。

こうも台湾の言い方は優しいなどと持ち上げると、何やら日本語の「いっていらっしゃい」は冷たく響くとでも言うのかと文句を言われそうだが、致し方がない。「いっていらっしゃい」の前に「早く…」と付け加えると、よくわかる。

どうです?厄介払いされているように聞こえないでもない…。

現在、日本は、人との距離感をとり、少し冷ややかな雰囲気があり、それに伴い挨拶も軽視されつつあり、台湾との距離感を縮めた感がある。