[1990年代の台湾] 流行り物は街中の看板に

台湾は、中小規模の商店が多い。看板は、色もとりどりで、大小もバラバラに街中に乱立する。看板群を見ていると、同じような看板があるに気付く。今流行りの業種の看板である。

KTV=カラオケルーム

繁華街を行くと、先々に『KTV』の看板がやたらと目につく。カラオケルームである。雑居ビルに入居する低料金を売りにした店もあるし、宮殿のような絢爛豪華な高級店もある。

店内は多くの小部屋に仕切られ、各部屋には大画面のカラオケ設備に、そして、テーブルにはマイクや選曲ブックが並ぶ。飲食物の持ち込みフリーのお店も多い。屋台のおつまみと、ドリンクを飲みながら皆が歌う。

KTVは気軽に騒げることが受けて、急成長した。一頃、流行に乗じた開店ラッシュで、瞬く間に街中がKTVで溢れた。間もなく競合が始まり、クラブさながらにホステスがいたり、食べ放題を始めたりする店も出現した。

KTVには日本語のカラオケテープも多くある。当時の台湾は、言わずと知れた海賊版天国。KTVの日本語のカラオケビデオも海賊版だったのだろう。一時期、著作権の取り締まりは厳しさを極めた。その影響だろう。いつしか日本語の曲がないKTVがめっきり多くなった。

MTV≠ミュージックTV

KTVの前に、『MTV』が流行っていた。MTVは「ムービーTV」の略で、KTVの元祖的存在。店内は幾つもの小部屋に仕切られている。

受付で部屋を借りて、お好みのビデオテープかレーザーディスクを一つ選ぶシステム。薄暗い個室にはソファ、テーブル、大型テレビが備わっている。簡単な飲食物の注文もできる。大画面に映像が映し出され、スピーカーからは大音響。さながら映画館。部屋が暗くて狭いという不健康さもあってか、MTVはホ-ムビデオの普及もあり、その影をすっかりひそめてしまった。

出租錄影帶=レンタルビデオ

台湾でもビデオはかなり普及していて、レンタルビデオを借りる人も多い。レンタルビデオ店に置くビデオは、映画ならアメリカや香港、ドラマなら日本の作品が多い。台湾は映像作品の観賞人口は多いと思われるが、どうも製作にはそれほど長けていないようである。しかし、台湾の得意分野はお笑いの分野であり、テレビで放映された番組が録画されてお店に並ぶ。その分野の著名人には『豬哥亮』や『胡瓜』がいる。

日本の作品ではドラマが多いことは前述したとおりであるが、お笑いの分野でも健闘していて、志村けんは台湾でも知らない人がいないくらい人気者である。

外国作品のビデオを見て台湾人がどう理解するのかは、音声は吹替えなしだが、字幕が華語であり、十分に楽しめるようになっている。

現在、ビデオデッキやレーザーディスクは時代遅れのものになってしまったので、さすがにレンタルビデオ店やMTVは姿を消しましたが、カラオケルームは淘汰されつつもまだ残っています。